Soft Machine -『Third』を聴いてみた

 そもそも、Soft Machineって名前だけは知っていたけど、しっかり聴いたことのないバンドのひとつだ。ブライアン・イーノへの影響が云々ということを耳にしたので、今回は名盤と名高い『Third』を聴いてみる。ジャケットは質素すぎて何の情報も与えてくれない。なんとなく王道のロック・サウンドをイメージしていますけれど、実際はどうなのでしょう。

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 全然王道ロックじゃないやんけ、コレ!びっくりしたわ。そもそもコレ、ロックですらなくないか?どちらかと言えば、ジャズに近い。全体に鬱屈した緊張感が立ちこめている感じは、完全にジャズ。でも、ロックの心地よさはしっかりあるな。荒々しく突き抜けていく感じ。ロックの中でもプログレに近いのか。でも、プログレほどの「構築」感はない。どちらかというと「脱構築」的なサウンド(?)というのか、完成品を崩していくベクトルがあるような気がする。一筋縄ではいかない作品のようですな。

 1曲目は「Facelift」。早速20分近い大曲。不穏に始まり、変化を続けながらウネウネと進行する変態サウンド。「変化」が楽しいってのは、やはりプログレ聴いてる感じと似てる。でもさっきも言ったけど、構築感が薄いんだよな。混沌の一部をのぞき見している感じ。2曲目は「Slightly All the Time」。またまた長い曲。これが結構王道のジャズ・サウンド。しかし、やはり見え隠れするロック的な抜けの良さ。ジャズの鬱屈感をロックがガス抜きしている感じかね。フュージョンともまた違う凄みがあります。3曲目は「Moon In June」。ボーカルがつきましたね。3曲目にして一番聴きやすい曲かもしれない。相変わらず長いけど。にしてもこの浮遊感は凄いなあ。見知らぬ工業都市の街あかりを夜空からじっと見下ろすイメージ。ここ最近の音楽シーンでも、サイケ、ドリームポップ周辺はこの音を参考にしてるんじゃないかしら。次は「Out-Bloody-Rageous」。アルバムの最後を飾る4曲目です。イントロから聴き手を混沌にぶち込む。これが長く長く続く。そして突然の主題提示。ゾクゾクします。混沌と秩序の対立。

 最初こそびっくりしたが、最後まで聴いてみれば、なんとまあ素晴らしいアルバムだろう。構築感と脱構築感。ジャズとロック。混沌と秩序。緊張と弛緩。とにかく均整がとれている。イーノへの影響ってのも頷けますな。間違いなく超弩級の名盤。何度か繰り返して、耳に馴染んでくる頃にはもっと好きになっていそうなアルバムでもある。