コロナウイルスのせいでお家で暇を持て余している中高生のために映画を紹介しまくることにした。

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 映画はいいもんです。最高の趣味だと思う。近所のTSUTAYAで1本100円くらいで借りられちゃうし。ちょっとお金に余裕があるのなら、Amazon Prime, Netflix, Hulu, U-NEXTみたいな配信サービスもいい。月額料金さえ支払えば、古今東西の名作が見放題。だからみんな、この期にいっぱい観てやろう。

 というのが、暇を持て余している生徒さんたちに対して、僕が言いたいこと。でも、不躾にこんなことを言ったところで、押しつけがましいと思われても仕方ないということも分かってます。下手したら、なんかのセールスみたいだし。だから、「映画はいいもんだ」と信じて疑わない人間の、もすこし個人的な実感を書いてみたいと思います。

 何を隠そう、僕もついこの間まで、中高生でした。そして今は大学生。映画を好きになってから、もう10年ちょっとになります。だから、小学生のときも、中学生のときも、高校生のときも、当然いまも、映画が大好き。これはたぶん一生涯変わらないというのが僕の見立てです。

 きっかけは『スターウォーズ』でした。これSFファンタジーの金字塔的名作で、最近新作も公開されてましたから、知っている人もいるかもしれません。でも、小学4年生だったころの僕はこの映画のことをほとんど知りませんでした。そんなとき、父に勧められて観たんです。正直ぜんぜん気乗りがしなかった。「いつの映画だよ?そんな古い映画知らないし、観たくないなあ。」って思ってたわけですが。

 でもしぶしぶ承知して、つまらなかったら寝落ちすりゃいいや、ってなくらいの気持ちで観始めたわけです。で、オープニングから脳天をブチ抜かれるような衝撃を食らったという。「なんだコレ!?面白すぎねえか?」と。結局、映画が終わるまでショック状態は続いて、その日は眠れませんでした。これ、僕のぼんやりした小学校時代の記憶の中で、ほとんど唯一明確に覚えていることなんですよ。

 そっからはもう沼にズブズブとハマっていった。するとね、不思議なことに生きる気力が湧いてくるんですよ。こんなこと言うと怪しい数珠を売りつけてるみたいで嫌なんだけど。でもね、「面白そうな映画はこんなにたくさんあるのに、死んでらんねえわ」と思ったわけです。あとは、現実で辛いことがあっても映画はいつも避難所になってくれた。学校ってだいたい嫌なことが起きるように出来てるんですよね。そんなとき、自分しか知らないようなマイナーな作品を観て、「これは自分だけの世界だ」と錯覚できたんです。というかこれは今もやってるか。

 あとは、世界を知れるというのもある。僕は映画を観ていなかったら、例えば、レバノンという遠い中東の国で起きた紛争に思いを馳せることなんておそらくなかっただろうと思います。これは一つの例に過ぎないですが。もっと単純なところで言えば、白黒映像の中で動いている人たちが生きていると実感することすらなかったんじゃないかと。

 とまあ、ここまでで何となく映画の良さが伝わっていていてくれたら嬉しいなと思うのですけど、映画の良さに関して当然忘れちゃいけないのは、やっぱり純粋に「めちゃくちゃ面白い」ってとこだと思います。例えば、テーマパークで恐竜が暴走して襲いかかってきたり、雪に閉ざされたホテルで狂った父親と命がけの鬼ごっこしたり、おもちゃが喋りだしたり、壮大なテーマ曲とともに殺人兵器が登場したり。なんだその発想?!っていうね。そんなん面白いに決まってるだろうという。

 そして、これは僕個人の意見だけれど、映画の良さには「面白さ」ともう一つ大きな柱があって、これは「芸術性」ではないかと思います。こちらは「面白さ」に対してちょっと難解かもしれません。「芸術性」というと敷居が高そうに感じられるなら、映画の中にふと訪れる「映え」感覚というと分かりやすいかも。僕個人としては、いちばん上に挙げた、1958年の映画『めまい』の何気ないカットには「映え」感を覚えたりします。まあとにかく、こっちの側面も楽しめるようになると、あらゆる映画が数倍も魅力的になると思います。が、こんなことは後々分かってくればいいので、気にしすぎないのが大事。

 どうでしょうか。ここまで映画の良さに関する僕の実感を書いてきましたが、映画の良さってこんなもんじゃないんです。なんたって、一つの作品の中に当然もっともっとたくさん要素が詰まっていて、しかも何百万本も作品があるんですから。だったら、他人よりは映画を観ているはずの僕が、コロナウイルスの影響で暇を持て余している生徒のみなさんに、映画をひとつひとつ紹介したらどうかと思ったわけです。そうして、ガイドラインをつくってみようと。

 ガイドラインを示す上で重要なのはルールです。だから、僕もルールを決めようと思います。

  1.  主な対象は、中学生~高校生。休校で暇を持て余している生徒さんたち。
  2.  紹介しまくる期間は、このコロナウイルスの自粛ムードが続く限り。
  3.  紹介する映画は古今東西の名作のうち、比較的観やすい作品に限る。

これでどうでしょう。何か不足があれば付け加えたり修正したりするつもりです。

 コロナウイルスの影響で逼迫した社会状況にある今こそ、誇張でなく、僕は文化・芸術が多くの人命を救うと信じています。辛いときに僕はいつだって映画に救われてきたんだから、それを社会に還元したいというのが僕の願いです。そして、だからこそ、ほんとうに、誰かひとりでも、僕の紹介する映画を参考にしてくれる方がいてくれたら幸いです。

 

※ちなみに、僕の映画好きとしての素性を明かさないことには信用ならないとも思うので、個人的な映画オールタイムベスト15を付記しておきます。基本的に変な映画が好物です。

  1. 『2001年宇宙の旅』(1968)スタンリー・キューブリック
  2. 戦争のはらわた(1977)サム・ペキンパー
  3. ファントム・オブ・パラダイス(1974)ブライアン・デ・パルマ
  4. 『野いちご』(1957)イングマール・ベルイマン
  5. 『ザ・バニシング-消失-』(1988)ジョルジュ・シュルイツァー
  6. 『鏡』(1975)アンドレイ・タルコフスキー
  7. ナッシュヴィル(1975)ロバート・アルトマン
  8. 『遊星からの物体X』(1982)ジョン・カーペンター
  9. その男、凶暴につき(1989)北野武
  10. 『チャイナタウン』(1974)ロマン・ポランスキー
  11. ブギーナイツ(1997)ポール・トーマス・アンダーソン
  12. 『天国と地獄』(1963)黒澤明
  13. 未知との遭遇(1977)スティーヴン・スピルバーグ
  14. 悪魔のいけにえ(1974)トビー・フーパー
  15. 『回路』(2001)黒沢清